やっと光のあたった”コンテンツ”

ネットが生まれて20年近く、マーケティングの概念を変える様々な変革が生まれ、そのマーケティングのトレンドを追うごとに、企業は収益を得てきました。メールマーケティング、SEO、リスティング広告、ブログ、モバイルマーケティング、行動ターゲティング、ソーシャルメディアと、新しいアプローチが生まれるたびに、多くの企業は、そのトレンドに追従してきました。
しかし、そのトレンドも、競争が激しさを増せば、利益に預かる企業は限られるようになります。たとえばかつて有料リンクが盛んだったSEOの世界のように。少なくても勝ち抜くには、投資の嵩を増やさなくてはならない難しい世界へと変容していきました。
またソーシャルマーケティングのように、小手先のアイディアでは効果の得られないものもあります。コミュニケーションの設計なしに、軽卒にトレンドの後追いしたものの、利益やブランディングの効果を得るに至らなかったケースを、私たちは多く見てきたはずです。

ウェブサイトの場合も同様です。以前は、ユーザビリティや情報設計というものに重きが置かれていた時代がありました。確かにユーザビリティや情報設計は、効果の高いウェブサイトを構築するための必須条件ではありますが、いまこの用語を声だかに語る人はいません。この10年、良質なウェブサイトをお手本に、模倣が繰り返され、標準化がなされたわけです。ユーザビリティや情報設計において、致命的な欠陥をかかえるウェブサイトは極端に少なくなりました。

私がここで伝えたいことは、「多くの企業が同じ方向を向いて競争している」という事実にあります。新しいマーケティング用語や手法をいち早く入手し実装します。そうしたアプローチは、一瞬光り輝くように見えますが、直に競合たちが追従してきて混沌とした世界へと変容します。そうした状況のなか、多くのマーケッターは、こうした「手詰まり感」を感じているのでないでしょうか。

トレンドよりも本質を追いかける

私が不思議なのは、

“ユニークネスの追求こそが、競争優位性の獲得であり、恒常的な収益の源泉となる”

はずなのに、多くの企業は、トレンドばかりを追いかけて、コミュニケーションという大原則に立ち返らないということです。

もちろんウェブマーケティングのトレンドを追うことは、競争を勝ち抜くうえでは重要であることは否定できません。しかしいくらアプローチを変えても、商品やサービス、企業の“中身”をどのように見せるか、潜在ユーザーや顧客とどのようにコミュニケーションするかというところは避けて通ることができません。この部分でしっかりとユーザーの心を掴むことができなければ、大きく収益をあげることは難しいはずです。しかし、なぜ、そこに力点を置かないのか。それは、ウェブ業界に入った2002年以降、長らく私のなかで燻っていた疑念であったわけです。

もう7、8年前のことでしょうか。WEB2.0という言葉が喧伝されていたころ、業界や出版系の方に、「次のトレンドは何だろう?」と質問を受けるケースがよくありました。わたしは、その都度、「原点にもどってコミュニケーションにフォーカスが当たるのではないでしょうか」と答えていましたが、そう答えたあと、例外なくどの質問者もつまらなそうな顔をしたことを思い出します。彼らは、本質的なものよりも、トレンドが欲しかったのしょう。

しかし、やっとここに来て、「手詰まり感」を感じている多くのマーケッターの間から、“コンテンツマーケティング”が、声高に叫ばれるようになってきました。やっと原点にフォーカスされるようになったのだと感じます。

中身で勝負する!

コンテンツマーケティングとは、コンテンツを通して、より深くユーザーとのコミュニケーションを成立させること、絆づくりを成立させることにあります。いままでにでも“コミュニケーション”にフォーカスが当たることはありました。“エンゲージメント”なども、名前は違えど、本質は同じことを語っています。しかしいつも主流になることはありませんでした。そこには、SEOなどと異なり、決まりきった公式やメソッドがあるわけではありません。それだけ難しさがあり、答えがあるわけではないから、“コンテンツ”は、トレンドにはなり得ないのかもしれません。

コンテンツとは、日本語で云えば、“中身”ということです。中身は、商品やサービスのことであり、企業の姿勢や活動、ユーザーにもたされるであろう便益など、すべての企業活動のことにあたります。当たり前のことを述べているようですが、重要なことは、つまり、嘘は語れないということです。企業活動の実体をともなわないハリボテのコンテンツは、容易にユーザーに見透かされることになります。“中身”は、演出方法だけでは誤摩化せないのです。

企業活動とコンテンツは、対の関係にあると云っても良いでしょう。

ユーザーに“中身”をどう見せるか、どのように光を当て、ユーザーとのコミュニケーションをどのように良好に成立させるか、これこそがコンテンツマーケティングの醍醐味なのです。

手づくりのコンテンツこそ、競争優位の源泉だ!

すでに“コンテンツマーケティング”をシステムで解決しSEOの効果を得ようとする多様なサービスが提供されているようですが、私が推奨したいのは、手づくりのコンテンツづくりにあります。そこには残念ながら、公式や万能な方程式はありません。しかし自身の商品やサービスに向き合い、努力してつくったコンテンツは、他社が容易に模倣できないものであるばかりか、あくまでも自身の商品やサービスを起点とするだけ、競合相手との差別化をも可能にするものです。

多くの企業が、コンテンツと向き合い、恒常的に評価されるブランド力を手にいれていただくことを願いたいと思います。

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出版社やゲーム会社など事業会社において、営業の最前線から上流の戦略策定まで一貫したマーケティング・経営の実践を学んだあと、2002年よりウェブへ転向。SEOやリスティング広告のコンサルティングを経て、現在は、ブランディング、コミュニケーションについてのプランニング・コンサルティングを行う。また近年は、映像制作やエディトリアル・コンテンツ制作にも力を入れています。著書:『ホームページ担当者が知らないと困るWebサイトリニューアルの常識』(ソシム刊)

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