直感で嘘を見抜く現在の消費者。

広告が死んだと云われて久しくなりました。マスプロダクションの時代は終焉を迎え、大量のTVコマーシャルを打てばオートメーションのように売れるという時代は、遠い昔の話です。モノが溢れる時代が訪れ、毎日夥しい広告を浴びるなかで、消費者のなかで、消費者は、少しずつ広告に信頼を寄せなくなりました。

さらに追い討ちをかけるようにインターネット時代が訪れ、消費者は、検索エンジンを通して欲しい情報へとアクセスできる自由を手に入れました。自ら情報を探すことができるようになった消費者にとって、広告は、ますます煩わしいものとなったわけです。

皆さんは、ネット上のバナー広告をクリックして、その場で商品やサービスを購入した経験はあるでしょうか。筆者自身も、そんな経験はほとんとありません。Googleのディスプレイネットワークの広告に一度でも出稿した経験があれば、容易に納得できるかと思いますが、バナー広告のクリック率の低さは、極めて嘆かわしいものです。インターネット黎明期には1%あったクリック率も、いまでは0.1%をクリアできなものも多く、クリックを実現させるには、膨大な掲載先を確保しなくてはなりません。しかも、せっかく得た数少ないクリック自体、本当にリード購入や購入へとつながっているか、どれだけ有効に働いているのか疑わしいものです。

最近は、リターゲティングなどの機能が備わり、状況は変わってきているものの、消費者の広告への拒否感は疑いようがありません。はっきりと顕在されていなくても、広告を避けたいという気持ちは、われわれの心の奥底に底流しているわけです。

企業論理を、消費者ニーズへとブリッジさせる。

“広告臭”、それは企業論理の、「売りたい!」「買ってください!」という、身勝手なメッセージの反映です。いきなり「買ってください!」というコミュニケーションは、何の準備も前触れもないなか、いきなり蹂躙されるようなもので、大袈裟な表現かもしれませんが、そこには“暴力性”が伏流しています。そうした企業論理のメッセージのなかに、“暴力性”があるということに自覚を持てるか、如何に敏感でいられるか、それがいま企業やマーケッターに求められる態度や姿勢ではないでしょうか。

「買ってください!」、そこには、消費者の心をグリップするものはありません。「本当にいいものだから使って欲しいです!」、それは企業側から見たら真っ当なメッセージなのかもしれませんが、TPOをきちんと考慮せずに、その熱意をダイレクトに向けてしまえば、容易にターゲットの反発を招くことになってしまいます。

消費者を説得したいのであれば、企業論理と消費者のニーズを、うまくブリッジさせることが求めらます。もういまの時代、自身のホームページで、如何にこの商品やサービスが優れているかを強く謳っても、消費者は、まともに信じてくれません。強く説得しようというコピーワークを見たユーザーは、心の奥底で、「自分の商品をよく言うのは当たり前じゃん。眉唾じゃないの?」という猜疑心がむくむくと湧き上がらせます。力説すればするほど、ユーザーの心は離れていきます。「本当なの?」、そうした猜疑心は、彼らを、比較サイトや口コミサイトへと向かわされることになるでしょう。

企業と消費者の、お互いのメリットを背反させずにマッチさせるには、ブリッジさせるところが必要なわけです。そのブリッジ部分をいかに設計するかが、それこそが、コンテンツマーケティングなのではないでしょうか。パンダアップデート以降、外部リンクが効かなくなったSEOの代替的なアプローチとして注目されるコンテンツマーケティングですが、本当に重要なのは、このブリッジ部分を効果的に構築することなのではないかと筆者は思います。

ブリッジ部分を、どのように設計すべきか。

ブリッジ部分の設計は、ターゲットについての深い理解が必要です。彼らの漠然としたニーズ、例えば、いま何が売れているのか、そんな売れ筋情報を追いかけるのではなく、現在の消費者の心の中を理解することが重要です。彼らが何を問題視し、何に焦燥しているのか、または何に喜びを感じ、何を期待しているのか、そうした心の中を理解することが重要なわけです。伝えたいという情熱があるのであれば、ユーザーを深く理解したいという強い動機を、自分の中で覚醒させていかなければなりません。「ああ、ユーザーインサイトね」なんて、知ったかぶりをしているマーケティング担当者や広告代理店に限って、ユーザーを理解することに情熱を傾けていなかったり軽視していたりします。そもそも、このブリッジ部分を設計するということは、何も新しいことではなく、マーケッターや広告のクリエイターにとって、昔から課せられている永遠のテーマと云っても過言ではありません。ことさらコンテンツマーケティングという言葉でいま耳目を集めていますが、原点を見直そうという運動ではないかと筆者は感じます。

しっかりブリッジさせればコミュニケーションが変わる。

さて話を戻します。ユーザーの問題点や焦燥するもの、求めるものを理解したら、自身のビジネス、商品やサービスが、彼らのソリューションであることを伝えなくていけません。ここがブリッジ部分になります。私たちが、あなたの悩みや問題の解決策を持っていることを伝えるわけです。ここにユーザー視点への変更が生じるわけです。ユーザー視点に切り替えることができれば、おのずとコミュニケーションが変わり、コンテンツも変わっていきます。例えば商品特性についてのコンテンツも、ユーザーの視点で考えれば、光の当て方が変わり、コンテンツの切り方が変わるだけでなく、内容に深みが増していきます。またユーザーの焦燥や懸念を理解していたら、彼らの気持ちに寄り添うコピーワークにおのずと変わっていきます。つまり語り口が変わることで取り交わされるコミュニケーションは、広告嫌い、企業論理を直感的に見抜く消費者の心を開くことになるでしょう。

ユーザーのニーズやウオンツ、焦燥や期待、そのような情報や感情を理解することによって、自分たちに何が発信できるのだろうかを考えること、これがコンテンツマーケティングの最初の起点になります。そこから何を、どこで、どのように、情報発信すれば良いかが自然と導かれることになるでしょう。発信するものは、商品紹介なのか、事例紹介なのか、ユーザーの声なのか、はたまた購入ガイドなどのeBook、またはユーザーの問題意識にフォーカスしたオウンドメディアを構築すべきなのか、様々な可能性が浮かび上がってきます。

特に自身のビジネス、商品やサービスを、消費者ニーズとの接点を考え抜き構想されたコンテンツは、他社にないユニーク性、独自性を与えてくれます。つまり、どれだけ深く消費者を理解し、ブリッジ部分を深く構想するか、それこそが、あなたのコンテンツを輝かせるための大きな鍵だということです。

本記事が、読者の方々のコンテンツマーケティングの一助になればと願います。

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出版社やゲーム会社など事業会社において、営業の最前線から上流の戦略策定まで一貫したマーケティング・経営の実践を学んだあと、2002年よりウェブへ転向。SEOやリスティング広告のコンサルティングを経て、現在は、ブランディング、コミュニケーションについてのプランニング・コンサルティングを行う。また近年は、映像制作やエディトリアル・コンテンツ制作にも力を入れています。著書:『ホームページ担当者が知らないと困るWebサイトリニューアルの常識』(ソシム刊)

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