ホームページの限界を知る

ブランド・コミュニケーションの中心は、長らくテレビなどマス媒体にありました。大量消費社会であった時代、なるべく多くのユーザーにリーチし、画一的な情報を伝達することが最も効果があった時代です。未だにブランドの中心をテレビを据える会社も多いのですが、インターネット時代を迎え、企業のブランド表現の中心は、ホームページへと大きくシフトすることになりました。テレビ媒体などマス媒体へと広告を打つことのできない中小企業や、B2B(企業間取引)の企業にとっては、自社を表現する新しい媒体となったわけです。

ホームページは、インターネットを通じて誰でもアクセスが可能な会社の顔となりました。そしてホームページをいかに見栄え良くするかは、マーケティング上における大きな課題のひとつとなりました。多くの企業が、サイトリニューアルに大きな予算を投下することからも、ホームページが企業にとって重要であることを示しています。

現在も、Appleのような縦長のデザインへと変更したり、スマートフォンでもストレスなく閲覧できるようにレシポンシブにしたり、動画コンテンツを組み込んだりと、自身のホームページでの表現力を高める努力が続けられています。

しかしいくら自社のホームページをリッチにしたとしても、そうした努力は、一部のユーザーにしか響くことはありません。たくさんの広告を打ったり、常に検索結果の上位に表示されているような恵まれた環境にない限り、ホームページに来てくれる来訪者は、あなたの企業について何かしらの情報を知って訪れるユーザーに限られます。広告を打たない限り、ホームページ上では、あなたの企業の存在について知らない潜在的なユーザーに訴求する機会はないわけです。

もちろん、ホームページに訪れてくれたユーザーは、あなたの企業を認知してアクションをおこしたわけですから、親和性が高いユーザーであり、重要なターゲットであることに疑う余地はありません。しかしネット上で、大きくビジネスを変えたいのであれば、ホームページの来訪者だけでは限界があります。ビジネスを広げるには、あなたの企業名を知らない多くの潜在的ユーザーへメッセージを届ける必要があるからです。いまさら云うまでもないことですが、漫然とホームページを構えているだけではビジネスは変わらないということであり、インターネット黎明期から現在にいたるまでSEOやSEMなど、多くの企業が集客に力が注いできたのも、ここに理由があります。

ユーザーの求めているのは、
賢明な判断へと導いてくれる客観的な情報だ。

もうひとつ、ホームページに限界として挙げておきたいのは、訴求力の限界です。現在は、情報過多の社会、マスメディア時代からインターネット時代へと移り変わるのなかで、消費者は、常に、多くの情報に接触することを余儀なくされるようにました。同様にわれわれは、朝から晩まで毎日、あまたの広告情報を浴びています。テレビはもちろんのこと、会社でPCを閲覧するときも、すき間時間にスマホでネットにアクセスしているときも、扇情的な広告は、こちらに注目しろと訴えかけてきます。自分の興味と関連性のない広告を過剰に受けることにより、消費者は、次第に広告に嫌悪感を募ら、意識化で広告を避けるようになりました。

また同時に、インターネットの検索機能の進化は、消費者の姿自体を大きく変えることになりました。消費者は、受け身として情報を摂取するのではなく、自ら能動的に情報を入手するようになったのです。そうした能動的な行動は、情報の真贋を見極めようとうする消費者の目を養うことになりました。自社の商品やサービスがいかに優れているかと訴求するホームページの情報を、現在の消費者は、「我田引水な情報ではないか?」と、疑念をもって迎えます。企業が、熱意をもって筆を揮えば揮うほどに、消費者は引いてしまうというジレンマを抱えることになったわけです。もう現在の消費者は、ホームページ上に並べられる美辞麗句を無批判には迎え入れてはくれないのです。

彼ら消費者が求めているのは、扇情的な言葉や美辞麗句ではなく、賢い買い物、懸命な判断へと導いてくれる客観的なコンテンツなのです。美辞麗句ばかりのサイトをみたユーザーは、すぐにブラウザの戻るボタンをクリックし、他の情報源を探しにいくことになるでしょう。高い広告費で集めたせっかくのユーザーも、こうしたコミュニケーションでは、ビジネスに結びつかないケースもあるわけです。

猜疑心の強い現在のユーザーを、
オウンドメディアで迎え撃つ。

では猜疑心をもった潜在ユーザーをどのように啓蒙していけば良いでしょうか。その答えのひとつが、オウンドメディア(自社の媒体/メディア)です。オウンドメディアは、自身のメディアであるわけですから、語る場所を、任意に決めることができます。自社のウェブサイト内にコンテンツを用意しても良いのですが、さきほど述べた通り、そこで語っても、手前味噌なイメージ、お手盛り感がつきまとってしまいます。潜在ユーザーの心を開かせ有効なコミュニケーションを機能させたいのであれば、思い切って、自社のホームページとは切り離されたところに情報サイトを構築することをお勧めします。

ユーザーの興味に即したテーマをもとに、情報サイトを構築すれば、SEOの効果とともに、潜在ユーザーを集めることができます。冒頭で触れた、あなたの会社を知らない潜在ユーザーとの接点が、ここに生まれるわけです。外部リンクサービスに依存していた従来のSEOは消失しました。Googleは、ユーザーにとって価値のある情報、質の高いコンテンツに評価を与えるようになりました。ユーザーニーズに即した質の高いコンテンツを提供すれば、情報検索をする潜在的なユーザーを獲得することがかのうになります。

それと同時に、会社のホームページとは異なる場所から発信することにより、自作自演といったわざとらしさは消失し、猜疑心の強い消費者の心にメッセージを届けることが可能になります。そこには、会社名や、商品名、サービス名は介在しません。潜在ユーザーを獲得するアプローチであるわけですから、購入商品の比較検討にあるユーザーではなく、その前段階であるユーザーを対象にしています。問題解決策を知りたい、解決してくれるモノは何かを知りたいなど、そうした情報を求めている段階のユーザーにとっては、具体的な商品名やサービス名を必要としていません。猜疑心の強い潜在ユーザーにとっては、そのような具体的な名称は、”押し売り”を匂わせるノイズのように見える場合もあるのです。

ユーザーの求めている情報に、ダイレクトに応えるコンテンツを提供することで、顧客満足度を高めることができます。それを束にしていけばオウンドメディア(自社のメディア)として成長させていくことが可能になるわけです。サイト名も、ユーザーの抱えるニーズや問題にフォーカスすれば良いでしょう。もちろんコンテンツを提供している企業名やロゴはしっかりと掲載し、ブランディングへとつなげることは重要なことだとは思いますが、記事内に自社商品の購入を薦めるようなコンテンツを掲載することは慎むべきです。主役はあくまでも顧客を満足させるコンテンツにあり、具体的な商品は、ここでは脇役にあるべきです。弊社がいくつか企画編集を担当したオウンドメディアでも、商品やサービスの内容を記事で扱うことは一切しないという編集方針をとりました。そのかわり、各記事の最下部やウェブサイトのサイドのカラム(列)に広告バナーを掲載することにしました。また別の機会に紹介しますが、サイトが成長するに従い、こうした広告バナーは、大きくリード獲得に貢献するようになりました。

語る場所を変えることで、潜在ユーザーの胸襟を開かせ、メッセージを届ける、そして潜在ユーザーに役に立ったという満足感を立ち上げることができれば、それは、ブランドに対する好意的な感情へと昇華していくことになることでしょう。流れては消えてしまう広告費の代わりに、オウンドメディアで情報発信をし、潜在ユーザーを獲得していくという試みもあるということを知っていただければ幸いです。

本記事が、少しでもオウンドメディア構築のヒントになればと願います。

シェア
前の記事動画ブログ:
スターバックスの事例に学ぶ
出版社やゲーム会社など事業会社において、営業の最前線から上流の戦略策定まで一貫したマーケティング・経営の実践を学んだあと、2002年よりウェブへ転向。SEOやリスティング広告のコンサルティングを経て、現在は、ブランディング、コミュニケーションについてのプランニング・コンサルティングを行う。また近年は、映像制作やエディトリアル・コンテンツ制作にも力を入れています。著書:『ホームページ担当者が知らないと困るWebサイトリニューアルの常識』(ソシム刊)

コメントなし

返事を書く